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「マルコム・ボルドリッジ賞の衝撃」


 この本のサプタイトルは、「アメリカを強くした経営品質基準」となっており、私が約20年前に中小企業診断士の資格を取った後に読んだものですが、最近改めて読み直してみました。

 当時は、経営はどうあるべきかなど血気盛んで探求心も強く、こうやるべきなのかと無批判に衝撃を受けた記憶があります。

 それから20年近く数多くの経営コンサルティングを経験した後に読んでみると、書かれている内容は今では経営の基本であり、特に目新しいものではないのですが、いかにもアメリカらしい合理性と緻密さを感じました。

 マルコム・ボルドリッジ賞(MB賞)は、顧客満足の改善や実施に優れた経営システムを有する企業に授与される賞で、米国国家経営品質賞とも呼ばれます。製造、サービス、中小、教育、医療などの部門があり、授賞式では大統領自らが表彰を行う権威ある賞です。

 MB賞は、1980年代の米国の国際的競争力の大幅な落ち込みに対処すべく、1987年のレーガン政権のもとで、製造業再生の戦略的ガイドラインとして、その設立に尽力した商務長官の名を冠して創設されました。

 審査は、「経営品質(TQM:Total Quality Management)」の考え方に基づき、「リーダーシップ」、「戦略策定」、「顧客、市場の重視」、「情報と分析」、「人材開発とマネジメント」、「プロセス・マネジメント」、「業績」など7部門の合計で採点が行われます。

 MB賞は日本生まれのTQCを徹底的に研究してつくられたものですが、TQCと違い、製造工程だけでなく、全社的な経営システムが審査対象となります。

 このMB賞を徹底的に研究、逆輸入し、1995年に創設された日本版MB賞といえるのが「日本経営品質賞」です。

 MB賞の受賞は、企業の提供する「顧客満足」の品質について重要なエビデンスとなりえます。これまでの受賞企業には、モトローラ、テキサス・インスツルメンツ、リッツ・カールトンなど国際的な大企業も含まれています。

 このように、「経営品質」とは、今では既にお馴染みの「顧客満足」が中心となっています。受賞企業の中には、毎週顧客から顧客満足のサーベイ結果をレビューし、問題の解決を討議しているといった徹底ぶりです。

 また、「顧客満足」を中心とする経営品質向上への取組みは、「従業員満足」とも関係があるようです。

 受賞企業の中には、転職率は他社に比較して低いが、それでも相当数の転職者がいる中で、3度出ていった従業員が3度戻ってきたケースがあり、その理由は、経営幹部が公平で職場がエキサィティグであるとのことでした。

この「顧客満足」と「従業員満足」をともに高めながら経営戦略を実行していくことが、経営改善の鍵となることを改めて確認できたように思います。

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